Shorai™ Sans:何も足さない「素」のかたち
小林 章 クリエイティブタイプディレクター
Shorai™ Sansは、Avenir® Nextの造形的要素を取り入れてデザインされたジオメトリック・サンセリフ体で、たづがね®角ゴシックに続く Monotypeの日本語書体です。Avenir Nextの幾何学的な特徴を活かし、文字の線を均一に保ちました。骨格を極限まで単純化し、すっきりとした形にまとめています。
付属欧文には和文にあわせてサイズや位置を調整した Avenir Nextを採用し、和欧混植に最適化しました。和文と欧文を別々の書体から選ぶ必要がなく、Shorai Sans単体で美しく読みやすいテキストを組むことができます。また、OpenType機能のプロポーショナルメトリクスとカーニングを使用することにより、書体デザイナーが設定した値を反映させた美しいツメ組が可能です。
Shorai Sansは、アドリアン・フルティガー氏と Monotypeクリエイティブタイプディレクターの小林章が制作した Avenir Nextにあわせる新しい日本語書体として、2018年より開発がスタートしました。1970年から 80年代の日本語ゴシック体に大きな変革をもたらした書体デザインの第一人者、中村征宏氏を制作メンバーに迎え、Monotypeの小林章、土井遼太の 3人で文字の形を考えていきました。
Avenir Nextで最も太いHeavyに相当するウェイトから制作を開始。極太で画数が多い文字の場合、それぞれの線の太さや重なり具合のバランスを取るためには常に創意工夫が必要とされます。Shorai Sansでは中村氏を始め小林・土井が試行錯誤を行い、今までにないアプローチでシンプルかつ大胆で絶妙な調整が行われました。例えば、漢字「得」のぎょうにんべんや平仮名「な」では、独特な線の重ね方がされており、書体の個性がよく現れています。
「Shorai Sansは、限界を超えるデザイン、実験的な試みに挑戦したと言えるでしょう。Heavyは一般的なサンセリフ書体よりかなり太くつくっていますし、ひとつひとつの形はギリギリまで簡略化して、文字の内側の空間がすっきり見えるようにしています。これは新しい時代のサンセリフです」(小林章)
基本となる漢字400字ができる頃、Monotypeの日本、香港、ドイツオフィスの書体デザイナーとエンジニア、そして中村氏が香港に集まり、1週間ほど一緒に書体制作をしました。日本語書体の制作では、書体デザインを終えてからエンジニアにバトンタッチするのではなく、両方を同時に進めた方が効率的であると過去の経験から学んだためです。将来の字種拡張も考慮し、最初から多国籍メンバーで開発を進め、世代や文化を超えたコラボレーションとなりました。
「中村さんの発想はいつも斬新で、驚きとわくわくの連続でした。世代を超えたコラボレーションによってできあがったこの書体からは、幾何学的だけれども、どこかに人の手の動きが伝わってくるのです。人のいる未来を描いているのがShorai Sansです」(土井遼太)
「Shorai Sansは、英文字感覚の平仮名ですね。私のように日本の字だけをつくってきた人にこの線は出せない。この書体が完成後に社会でどのように使われるのかを見たいと思います」(中村征宏氏)
Avenir Nextにあわせ、Shorai Sansも超極太から極細までの10ウェイト(Ultra Light、Thin、Light、Regular、Medium、Demi、Bold、Extra Bold、Black、Heavy)での展開となりました。最も太いHeavyでは、複雑な輪郭線を整理し、最大限の太さを追求。これまでにない限界を超えた太さのゴシック体になりました。バリアブルフォントを採用し、ウェイト間の太さの調整も可能です。文字数はAdobe-Japan1-3(OpenType StdN)に準拠。デスクトップ用のほか、ウェブ、ePub、HTML5を使用したデジタル広告などのライセンスを選択できます。
たづがね角ゴシックは、Neue Frutiger®にあわせたヒューマニスト・サンセリフですが、Shorai SansはAvenir Nextにあわせたジオメトリック・サンセリフに分類されます。求められる用途や雰囲気にあわせて、2種類のサンセリフを使い分けることにより、表現の幅がさらに広がります。
書体名の「Shorai(ショウライ)」は、松の枝を吹き抜ける風や音の意味である「松籟」に由来しています。茶道では茶釜の湯がたぎる音を意味し、日本的で優雅な響きのある名前です。誰でも発音しやすく、世界中の方々にお使いいただける日本語書体です。
Monotypeのオンラインサイトの他、販売店各社にてご購入いただけます。