Tom Foleyとの対談:トレンド、サンセリフの衰退の可能性、そしてタイムレスな書体の特徴について.

世界のトップブランドの多くと緊密に連携していることで、現在トレンドになっている書体や、近い将来トレンドになり得る書体について、数多くの実践的な洞察を得ることができています。

エグゼクティブ・クリエイティブ・タイプディレクターのTom Foleyが、Antalis Creative Powerと共に2021年の書体のトレンドレポート、サンセリフ体の現状、そしてフォントをタイムレスなものにする要素について議論しました。

(初出:Antalis Creative Power

 

Monotypeと、そこでの仕事について少し話していただけますか?

Monotypeは伝統的にはタイプファウンダリとして知られていますが、過去20年ほどでそれ以上の存在になりました。一方では、私たちは世界で最も有名な書体の数々を守り続けています。また他方では、書体デザインと技術の最前線に立つ書体企業でもあります。Monotypeは今日のタイポグラフィの世界の中心に位置しています——これは一部の人には誇張に聞こえるかもしれませんが、私は本当にそう信じています。こうした専門知識と野心こそが、私たちは次に発表するトレンドレポートのような取り組みに反映されているのです。

このトレンドレポートの作成について、もう少し詳しく教えていただけますか?

タイポグラフィのトレンドは、グラフィックデザイナーやブランディングエージェンシーの間で人気のあるテーマです。なぜなら、タイポグラフィはすべての成功したブランドアイデンティティにおいて重要な要素だからです。私たちはこれまでにもトレンドレポートを作成してきましたが、ここ数年でこの取り組みを次のレベルへと引き上げています。世界のトップブランドの多くと密接に協力することで、どの書体がトレンドになっているのか、近い将来新たなトレンドとなり得る書体はどれなのかについて、多くの実例に基づく洞察を得ています。また、「フォントユーザーの習慣調査」からのデータにもアクセスでき、購入されているフォントや人気のあるフォント、ユーザーが選択肢に期待すること、さらにトレンドとなっているフォントファウンダリについても把握しています。そこで今年は、こうした知識すべてを業界内のコネクションと結びつけてみようと考えました。ブランディングやテクノロジーの最前線で活躍する人々と協力し、それらをすべてまとめて、これまで以上に大規模で優れたタイポグラフィトレンドレポートを作成することを目指しました。この野心的なプロジェクトは、Monotypeの素晴らしいチームによって主導され、過去6か月にわたって取り組んできたものです。

「タイポグラフィの世界では、より多様性が見られるようになるでしょう。これはいつでも歓迎される変化です」

Tom Foley, Creative Type Director

今年、世界的なパンデミックは、多くのクリエイティブ分野に大きな影響を与えましたが、書体デザインにおいけるクリエイティブな影響はどのようなものでしたか?

私たちはみんな、状況に完全に左右される存在であり、現在起きていることは中長期的に影響を及ぼすでしょう。即時的な変化としては、パンデミック初期の6か月間でデジタルトランスフォーメーションが確実に加速しました。それによって多くの企業が優れたブランディングやタイポグラフィの重要性が高まり、その結果として、いくつかの業界はデジタル空間への移行を非常に迅速に進めました。このことは、これまであまり重視されてこなかった領域においても、ブランド資産としての書体の重要性を高めることにつながったと、私は考えています。中長期的には、ブランドはライフスタイルや行動、そして期待の変化に対応してくでしょう。たとえばリモートワークのようなものが、人々の生活の多くの側面を変え、優先順位のあり方を変化させました。これらの影響がどのように展開していくかは未知数ですが、すでに何らかの影響を及ぼしており、美的変化も現れ始めていると考えられます。

「オーセンティックな書体」の復活について話していましたが、それはそうした美的変化のひとつなのでしょうか?

はい、私たちが経験してきた最近の急激なペースの変化や混乱によって、多くのブランドがオーディエンスとのコミュニケーションにおいて、真実味や親しみを感じさせる方法を模索していると思います。これが、懐かしさや安心感、親しみといった感覚を呼び起こす書体の使用につながっているのだと思います。良い例としては、2020年後半にJKRが手掛けたBurger Kingのリブランディングがあります。非常に成功したリブランディングで、アイデンティティの中心要素として、柔らかでレトロな書体が使用されています。ですが、このテーマについてはトレンドレポートにもっと詳しく書かれているので、ぜひチェックしてみてください!

他にはどのような変化が予想されますか?

人々は書体を使ってより興味深いことを行うようになっています。それがこのパンデミックに直接関連しているかどうかはわかりません。以前にも言ったように、多くの人が同じ空間で競い合うようになると、突然目立つ必要性が生まれるのかもしれません。トレンドの背後には、常に実用的な理由があります。たとえば、サンセリフ体のトレンドと、ブランドにおけるユーザーインターフェースやユーザーエクスペリエンスのデザイン原則との間には、関連性を感じます。印刷物、ウェブサイト、アプリを通じて、一貫性があり、簡単で、アクセスしやすいユーザーエクスペリエンスの必要性は、多くの大規模で影響力のあるブランドにとって非常に重要です。読みやすいサンセリフ書体は、こうした原則を非常によくサポートし、サンセリフ体のトレンドを後押しした要因のひとつかもしれません。現在では、こうした原則の上にさらにブランド認識を積み重ねる必要性が生じてきています。そのため、より表現力豊かな書体の使用や、バリアブルフォントなどの新しい技術を通じた動的でアニメーション化された書体の、より実験的な使用が見られるようになるかもしれません。

昨年のレポートでは、主要なトレンドのひとつとしてグローバルな言語対応の必要性が挙げられていましたが、その傾向は今も続いていますか?

それはトレンドから業界の特徴へと変化したと思います。これには、異なる言語間で統一されたタイポグラフィの声が必要であり、ブランド表現の一貫性をサポートすることが最終的な目的となる場合が多いです。この目的は、これまで主にニュートラルなサンセリフ体を基盤としたデザインによって実現されてきましたが、それには先きほど述べたような理由が多く含まれています。そして、グローバルブランドが進化するにつれて、より表現力のある、コントラストの強いスタイルが、多言語対応の耐規模な書体ファミリーの中に登場するかどうかを見るのは、とても興味深いと思っています。

あなたにとって、タイムレスな書体とは何でしょうか?

私にとって、タイプデザイナーとしての視点から言えば、タイムレスなデザインとは、特定の書体がジャンルとして確立されることと関係しています。ヒューマニスト、トランジショナル、スラブセリフ体、サンセリフ体など、確立された書体のカテゴリがあります。これらはすべて、ひとつまたは複数の書体のデザインから始まり、それがトレンドとなり、最終的にジャンルへと進化しました。タイムレスな書体はまた、中立性を持ち、デザインの特徴に一貫性があり、美しさと実用性のバランスを備えています。ただし、あるデザインが広く使用されることによって、タイムレスな性質を獲得するという点も、忘れてはならないと思います。これは、ある書体が支配的な印刷や出版技術を通じて広く流通したり、成功したマーケティングによって広まったりすることで起こることがあります。ですから、私の考えでは、タイムレスな書体とは、美しさ、実用性、親しみやすさ、そしてその結果として生まれる文化的共鳴と、時代との関連性の組み合わせを持っています

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