MonotypeとAdobe Fonts ―― 進化を続けるフォント事情

2018年にAdobeのフォントサービスTypekitの名称がAdobe Fontsに変わりました。事実上、Adobeは独立したサービスとしてのフォント事業から手を引くことになり、これらのフォントはCreative Cloudのサブスクリプションアプリに組み込まれました。
AdobeのパートナーであるMonotypeとしては、Arial、FF Dax、FF Scala、Times New Roman、Rockwell、Unitextなどを含む何百ものMonotypeのフォントがCreative Cloudのワークフローの中心に据えられたことを喜ばしく思っています。私たちが目指すのは、世界のどこで制作活動をしているかにかかわらず、できるだけ多くのプロのクリエイターに当社のフォントをお届けすることです。
Adobe の発表によれば、Adobe Fontsを印刷物やウェブで使用したい場合、その権利はカバーされるということです。特に個人のクリエイター職の方には、願ってもない話でしょう。しかし、当社のエンタープライズレベルのお客様からは、この件が自社のMonotypeとの関係にどう影響するのかという声が多く聞かれます。現実を言えば、Adobe Fontsはエンタープライズ向けのサービスではありません。したがって、今回の変更は個人のクリエイターにとっては大きな後押しになりますが、エンタープライズの制作部門が本当に必要としている機能や能力をすべて提供するものではないのです。Adobe Fontsの有用性の範囲がどこからどこまでなのかを明確に見分けることが重要だと、当社は考えています。
エンタープライズのワークフロー
第一に、Adobe Fontsの使用許諾は個人のAdobe IDを持っていないと取得できず、ログインアカウントの共有は認められていません。つまり、ウェブプロジェクト(以前は「キット(kits)」と呼ばれていました)の作成、編集、発行、メンテナンスは1人のユーザーしかできず、複数人が所属する制作チームによるアクセスや編集はできないということです。ユーザーがフォントを特定のプロジェクトとパッケージ化して、他のユーザーやコンピュータに転送することはできません。
エンタープライズやエージェンシーの制作チームにとって、このことは制作ワークフローに大きな妨げとなります。当社の考えでは、プロジェクトを共有した場合と同じ仕上がりになるようにするだけのために、チームメンバーはそれぞれお互いのフォントリストを複製しなければならないため、長期的に見ればかえって業務量が増えることになると当社は見ています。
ブランドやキャンペーンのリーチ範囲が限られる
デスクトップアプリケーションやウェブアプリケーションに使用するフォントのライセンスを取得したい個人のデザイナーにとっては、Adobe Fontsはよい選択肢ですが、このサービスでは、モバイルアプリやサーバー、AR(拡張現実)やVR(仮想現実)のアプリケーションなど、その他のエンタープライズ向けアプリケーションでフォントを使用できるライセンスは取得できません。そのため、キャンペーン作成用にAdobe Fontsのフォントを選び、そのキャンペーンの範囲を基本的な印刷物やウェブ上のタッチポイント以外にも広げようと考えた場合、デザイナーはそのフォントを所有するファウンダリに直接問い合わせて、その他の用途での使用権を許諾してもらえるかどうかを確認しなければなりません。そうしないと、ブランドの「見え方」が媒体によって一貫しないことになってしまいます。この作業に対応するのには時間も費用もかかります。言うまでもなく、消費者の体験は中途半端なものになりかねません。一貫性のあるブランド体験に投資することは、ブランドを成功させるための基盤です。
誰がフォントを使用しているかを把握しているか?
プロジェクトで使用されるAdobe FontsのWebフォントは、実際にそれを使用するブランドではなく、Adobeによってホストされます。つまり、各企業が自前のサーバーでWebフォントをホストすることはできないため、自社の広告やキャンペーンに使われているWebフォントを第三者のサーバーがどのように表示するかをまったくコントロールできないことになります。ウェブページの管理やホスティングを外部のエージェンシーに任せているブランドも、やがて異変に気づくことになるでしょう。Adobe Fontsでは、エージェンシーがクライアントのWebフォントのホスティングを代行することはできなくなるためです。
フォントの継続性はどうなる?
最後の点として、Adobeが連携している多くのファウンダリパートナーのどこかが、Adobe Fontsライブラリへのフォント提供をやめたらどうなるのかという疑問も消えません。Adobeは補償条項を取り下げたため、ライセンスとフォント管理に関する全責任をクリエイターが各自で担うことになります。もし使用しているフォントがライブラリから削除されたら、デザイナーの側には何も解決の手段がありません。
このことは、商用利用されることのないデザインには大して影響しないかもしれませんが、ブランド構築プロジェクトや販促キャンペーンを制作するエンタープライズやエージェンシーにとっては大きな悩みの種になりかねません。もしAdobeのファウンダリパートナーがインベントリからフォントを引き上げたら、フォント管理やライセンス取得の担当者の間で大混乱が起きるでしょう。
私たちMonotypeは、フォントを専門に扱う企業です。知的財産そのものの美的価値や有用性の大切さを理解しているだけでなく、もう一歩進んで、フォントを「業務で扱う」にあたって企業が直面する問題を解決できなければならないと、当社は認識しています。結局のところ、ピカピカの新車を持っていても、運転の仕方や駐車する場所、ガソリンの入れ方や保険の入り方などを知らなければ、何の役に立つでしょうか?フォントについても同じことが言えるのです。
エンタープライズワークフロー:Monotypeが対応します
車のたとえ話を続けると、Monotype Fontsを利用すれば、ブランドやエージェンシーは業界随一の保証のついた高級車を手にすることになります。エンタープライズレベルの課題に対するMonotypeのアプローチは他とは違い、ブランドに関わるすべての方々を念頭に置いています。
Monotype Fontsでは、人数や構成を問わずどんなチームでも多種多様なフォントにアクセスできます。チームの責任者はそれぞれのユーザーの必要に応じてフォントへのアクセスを制限できますが、個々のライセンスやユーザーIDの問題への対処に煩わされることはありません。Monotype Fontsでは、メンバーの役割や責任が変更された場合に、チーム責任者がユーザーのアクセス権を調整することもできます。
クリエイターの仕事の場は絶えず変化していることを当社は認識しています。ブランドやエージェンシーでは、フリーランスなどにデザイン業務の支援を依頼する必要があることも多く、そういう業者がチームの中心メンバーになる場合もあります。Monotype Fontsを利用すれば、そうした動きにも柔軟に対応し、必要に応じて異なるアクセス権を追加することができます。一つのサービスの中でそれが可能なら事は簡単ですし、不安や疑念が生じたり、後になって想定外の費用がかかったりすることもありません。

広く使われるMonotypeのフォントはセルフホストが可能
Monotype Fontsには、Avenir、Frutiger、Helvetica などの定番からBetween、Kairos、Madera、Neue Frutiger Worldなどの比較的新しいデザインまで、15万以上のフォントが収録されています。収録されているフォントはすべて厳しいテストを経て、事実上、消費者とのあらゆるタッチポイントで正しく動作するようになっています。Monotype Fontsを利用すれば、クリエイターはこれらのフォントをデスクトップ上で制限なく使用でき、エンタープライズやエージェンシーは、デスクトップ、ウェブ、モバイルアプリ、埋め込み、サーバーなどでの使用も含めて、必要なフォントのライセンスをごくシンプルな方法で取得できます。さらに、ブランドやエージェンシーはライセンスを取得したフォントを自社でホストできるため、デジタル広告やキャンペーンでのWebフォントの表示のされ方を自らコントロールできる範囲が広がります。
Monotype Fontsは外部のフォントやソフトウェアにも対応
Monotype FontsのインベントリはMonotypeの広範なグローバルフォントのライブラリから構成されています。当社が目指すのは、エンタープライズの皆様が、やがて独自のカスタムフォントや専有フォントをそこに加えられるようになっていただくことです。これはつまり、ブランドやエージェンシーはライセンスを取得したすべてのフォントについて、Monotype Fontsのすべてのメリットを享受していただけるということです。また、Monotype Fontsは同サービスを通じて表示されるすべてのフォントについて補償による保護を提供していますので、安心してご利用いただけます。
Monotype Fontsのサービスは、デザインワークフローを念頭に置いて設計されています。デザイナーは組織の中の立場や使用しているソフトウェアプラットフォームの種類にかかわらず、簡単にフォントを見つけ、ダウンロードし、使い始めることができます。どのフォントを使えばいいかについて指針や助言が欲しいときにも、救いの手はすぐそこにあります。フォントのデザインとエンジニアリングに精通した業界屈指のエキスパートがその技術と専門知識を駆使して、クリエイターの皆様のニーズに合った最適のフォントを見つけるのをお手伝いします。
私たちMonotypeはフォントに情熱を傾けています。フォントはあらゆる広告キャンペーンやブランドアイデンティティに不可欠なものです。
クリエイターの方が次のブランドをCreative Cloudで構築しようとしている場合でも、Monotypeは間違いなくお力になります。また、エンタープライズの一員として、自社のブランドシステム内のすべてのフォントの管理、配布、検索、可視化を行うより良い方法を探している方でも、Monotypeはお手伝いできます。
まとめ
- フォントを見つけ、管理し、組織全体に配布するためのエンタープライズ向けの実証済みソリューションをお探しなら、Monotype Fontsがそのニーズにお応えします。
- ブランドの一貫性を確保し、投資効果を最大限に引き出して将来まで安定したブランドを構築したいとお考えなら、Monotype Fontsで実現可能です。
- あらゆる場面でフォントを使用できる権利を確保しようとしたときに生じた問題を解決したい、組織内の誰がフォントを使用できるかをコントロールしたい、フォントの使用を一つの制作環境だけに制約されたくない――このような問題に対処できるのはMonotype Fontsだけです。
ブランドの破綻を避けるために、どの程度なら投資していいとお考えですか?
エンタープライズ全体でフォントを活用できることが重要だとお考えなら、Monotype Fontsが最善の選択肢です。その理由をこちらでご確認ください。