Monotype クリエイティブ・タイプディレクター小林章が Type Directors Club の「TDCメダル」受賞者に決定
ニュース
ニュース
Monotype クリエイティブ・タイプディレクター小林章が Type Directors Club の「TDCメダル」受賞者に決定
タイポグラフィ界に顕著な貢献をした個人や団体に贈られる TDC の最高賞
世界有数のタイポグラフィ団体 「Type Directors Club」(TDC)は、Monotype クリエイティブ・タイプディレクターの小林章に同団体の最高の栄誉である TDC メダルを授与すると発表しました。
1967年に Hermann Zapf (ヘルマン・ツァップ)氏が最初の受賞者となった TDC メダルは、タイポグラフィの分野で顕著な貢献をした個人・団体を表彰するものです。コミュニケーション、コミュニティ、文化におけるタイポグラフィの価値を、その仕事と才能によって証明してきた人々への TDC としての謝意を表しています。歴代の TDC メダル受賞者はこちらからご覧いただけます。
今回の受賞にあたって、小林は TDC に次のようなメッセージを寄せています。
「TDC メダルに選ばれたと聞いたときは驚きました。私にとっての憧れのヒーローたちに与えられてきた賞なのですから。私のこれまでの40年近くの経歴がこのように評価されたことは大変光栄に思います。
私を励ましてくれた過去から現在までの先生方や同僚の方々に対して、そして私を支えてくれた両親、家族に感謝の思いを伝えたく思います。私がこの栄誉を授かったのは、ひとえに彼らのおかげなのです」
小林は書体デザインの世界で40年近くの経験を持ち、この分野の第一人者のひとりです。日本語と欧文の書体デザインに精通し、カリグラフィにも深い造詣があります。
武蔵野美術大学を卒業後、株式会社写研に入社した小林は、日本語書体の設計に携わります。その後、英国に渡ってロンドン・カレッジ・オブ・プリンティング(現ロンドン・カレッジ・オブ・コミュニケーション)でカリグラフィを学び、日本に帰国。欧文書体デザイナーとして数社で働いた後、フリーランスとして独立します。
2001年にドイツの Linotype(現 Monotype)のタイプディレクターに就任後は、Hermann Zapf 氏とともに Zapf 氏デザインの Optima の改良に取り組み、2002年に Optima Nova を発表。2009年にはやはり TDC メダリストの Adrian Frutiger(アドリアン・フルティガー)氏と組んで、フルティガー氏の名を冠した Frutiger の改刻版、Neue Frutiger を発表しました。
そして2017年には、モノタイプ初となる日本語書体、たづがね角ゴシック のディレクションを担当しました。小林自身、これまでに DIN Next、Akko Pro などなど、50を超える欧文書体をデザインしたほか、ソニー、UBS、パナソニックなどの大手企業と組んでカスタム書体の開発も行ってきました。小林が手がけた最近のプロジェクトのひとつが、2022年の初めに発表された Shorai Sans です。日本語書体の新たな地平を切り開く Shorai Sans は、Avenir® Next に合う書体として開発され、日本語の手書き文字のエッセンスを保ちつつグローバルなデザインとも調和するよう設計されています。
小林は自身の欧文書体で、これまで国際的な書体コンペティションで数々の賞に輝いています。また世界各地で講演や書体デザインワークショップを行い、2004年の TDC タイポグラフィコンペティションをはじめ、世界的な書体デザインコンテストの審査員も務めています。
TCD のエグゼクティブディレクター、キャロル・ワーラー氏は今回の決定に関して次のようにコメントしています。
「TDC メダリストとは、タイポグラフィデザインに長け、この分野でクリエイティブな才能を育むことに情熱を持って取り組む人のことです。彼はまさに TDC メダリストそのものです。彼の模範となるような功績と貢献をたたえ、世界のタイプコミュニティを代表して TDC メダルを授与できることを光栄に思います」
この特別な機会を記念し、TDC は Web サイトデザインツールの Readymag を利用して、TDCメダルとその歴代受賞者が与えた影響とレガシーを深く掘り下げる特設サイト「The Faces Behind Typefaces」を制作しました。
TDC メダルの授与はニューヨークの非営利団体「The One Club for Creativity」のブラックタイ・セレモニー「Creative Hall of Fame」(クリエイターの殿堂)で行われます。このセレモニーは、非営利団体が世界中で展開しているダイバーシティ(多様性)・インクルージョン(包括性)活動を支援するチャリティーガラパーティーも兼ねています。セレモニーは2022年10月27日、ニューヨークのハドソンヤードにある文化複合施設「The Shed」内のイベントスペース「Tisch Skylights」で開催されます。TDC は2020年に The One Club for Creativity の一員となっています。
The One Club for Creativityは、The One Show、ADC Annual Awards、Type Directors Clubコンペティション、TDC Ascenders、Young Guns、Creative Week をプロデュースする世界有数の非営利団体で、世界のクリエイティブコミュニティを支援し、その活動をたたえることをミッションとしています。各アワードの表彰イベントで得た収益は、DEI(Diversity 多様性・Equity 公平性・Inclusion 包括性)、教育、ジェンダー平等、クリエイター育成の各分野のプログラム資金として業界に還元されています。具体的には、毎年開催されるダイバーシティ会議・キャリアフェアの「Where Are All The Black People」、黒人クリエイター育成のための画期的な無料ポートフォリオ講座「One School」、世界中の多様な若手クリエイターのための「Creative Boot Camps」、女性やノンバイナリーのクリエイターのためのメンタープログラム「Elevate」、「Next Creative Leaders」プログラム、毎年開催される若手クリエイターと著名クリエイティブディレクターとの交流イベント「Portfolio Night」などがあります。中でも5月に開催される「Creative Week」は、広告とアートの交流をたたえる祭典として有名です。
TDC メダルのセレモニーの様子はこちらからご覧いただけます。