書体はなぜ人の心を動かすのか

トピック

デザイナーもブランドの専門家も、その理由は正確に説明で きなくても、書体が人の感情に影響を与えることは以前から 知っていました。書体の使い方が適切でないと、消費者はそ れを本能的に感じ取ります。書体は無意識のうちに感情に影 響を与えます。ただ、それを数値化するのは難しいことです。 高速道路の標識の書体が Comic Sans だったら指示に従いますか? Papyrus を使っている保険会社の住宅保険に入りますか? もししないとしたら、それはなぜなのでしょうか。

こんな経験はありませんか―住宅ローンの借り換えや他の 保険会社への乗り換えを勧める手紙、メールが来た。一見特 に問題はなさそうだけれど、何か違和感が。よく見ると品質の悪いフォントが使われている。そして思わずこんなことが 頭をよぎります―「もしかして、詐欺?」

ブランドは書体を通して信頼、誠実さ、確実性を伝えます。たとえロゴや写真、グラフィックデザイン、UIデザインに非の打ち所がなくても、見た人が書体が合っていないと感じた瞬間、不信感や不安感が生まれます。

デザイナーもブランドの専門家も、その理由は正確に説明できなくても、書体が人の感情に影響を与えることは以前から知っていました。書体の使い方が適切でないと、消費者はそれを本能的に感じ取ります。書体は無意識のうちに感情に影 響を与えます。ただ、それを数値化するのは難しいことです。 高速道路の標識の書体が Comic Sans だったら指示に従いま すか? Papyrus を使っている保険会社の住宅保険に入りますか? もししないとしたら、それはなぜなのでしょうか。

Monotype は、神経科学の観点から消費者行動を調査する Neurons 社と共同で、書体が感情を左右するという私たちが長年信じてきた考えが正しいのかどうか、実際に人間の感情に影響を与えるのかどうか、実験・検証を行いました。私たちはこのプロジェクトを通じて、書体がどのように経験、連想、感情を引き起こすのかを理解し、使用場面に応じた書体の有効性について評価したいと考えました。 書体はタグラインやスローガンへの私たちの反応に影響を与えることができるのでしょうか。企業ロゴのより肯定的な見方を促すことができるのでしょうか。そして、ブランドと消費者との間に実際に信頼関係を築くことができるのでしょうか。

タイポグラフィでよく直面する問題は、なぜそんなに重要なのかということです。一般の人たちにとって、業界以外の友人や家族にとって、そして、あなたが舵取りや影響力の発揮で力を貸そうとしている企業の幹部にと ってタイポグラフィがなぜそんなに重要なのか。これに尽きます

Monotypeブランド担当シニアディレクター James Fooks-Bale 

調査の方法

Monotype と Neurons は150人を対象に 3 種類の刺激要因(ひとつの言葉、その言葉の入った文章、その言葉とブランド名の入った文章)を使って調査を行いました。それぞれを 3 種類の書体(6 ページ参照)で組み、回答者は各組み合わせを「誠実、印象的、信頼 感、確信」といった感情指標で評価しました。 調査結果は、書体が感情にどう働きかけるのかについての私たちの考えを裏付けるものとなりました。書体の選択だけで人の感じ 方に大きな影響を与えることができ、 調査では肯定的な反応が30%を超えたものもありました。普通は0~5%程度 という中で、このように説得力のある数字が出たことは Neurons にとって驚きでした。

普通は0~5%程度を予想しますが、今回はそれをはるかに上回りました。書体には力があり、人の気持ちに実際に影響を与えることが証明されたのです。とても興味深いことです。

Neurons最高執行責任者 Mike Storm

次の段階へ

同じ調査を他の国や言語で実施したらどうなるのか。英語で期待通りの結果が得られた私たちは、同じ「quality、trust、innovation」というブランド価値を表現した単語を使って、日本語を母語とする人への調査を依頼することにしました(調査では「品質の確かさ」「信頼」「イノベーション」という日本語表現を使用)。言語、タイポグラフィ、文化は互いに密接に関わり合っています。果たして結果は異なるのか、異なる場合はどの程度なのかを知りたかったのです。方を促すことができるのでしょうか。そして、ブランドと消費者との間に実際に信頼関係を築くことができるのでしょうか。

神経科学の応用

こうした問いの答えを探るため、Neurons は数十年にわたるデータ収集と消費者神経科学の経験を駆使して、書体に対する人々の意識的・無意識的な反応を測定しました。検証に使用したのは、ヒューマニスト・サンセリフ体の「たづがね角ゴシック」、ジオメトリック・サンセリフ体の「Shorai Sans」、明朝体の「秀英明朝」の 3 書体です。

それぞれがタイポグラフィとデザインの歴史に根ざした特徴ある書体のため、文字の形やその効果といった細かな部分まで比較することができます。書体の選択はブランドのカスタム書体制作の豊富な経験をもとに行われましたが、その目的は自分たちの思い込みをすべて疑ってみることにありました。いずれの書体も見覚えのあるブランドの文字に似ているものの、有名企業を思い起こさせるものではなく、認知度としてはちょうど良いものです。既存のブランドデザインを無意識に連想させることを避けることができます。 

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